愛嬌のある姿やしぐさ、飼いやすさで人気のハムスターですが、ハムスターにはそうした愛らしさとは裏腹な、意外な一面があります。それがハムスター同士の共食い行動です。
では、ハムスターが共食いをする理由は何なのでしょう。その原因はどこにあるのでしょう。このページでは、ハムスターが共食いする原因(理由)と対策についてご紹介しています。
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ハムスターの共食いには、いくつかの原因(理由)が挙げられますが、そのなかでもとくに大きく関係しているのが「ハムスターの縄張り意識」です。
ハムスターは、ゴールデンハムスターやジャンガリアンハムスター、ロボロフスキーハムスターなどの種類による違いや、それぞれの個体差による違いもありますが、基本的に強い縄張り意識を持った動物です。
フリーの百科事典ウィキペディアの「縄張り」のページに「動物にとっての縄張りは個体や集団の防衛、食料の確保、繁殖の成功などを容易にする機能を持つ」とあるように、ハムスターも他の野生動物と同じように、自然界でより有利に生きていくために本能的に縄張りを必要とし、手に入れた縄張りを守りたいという強い欲求を持っています。
当サイトの「ハムスターの多頭飼育と単独飼育」のページでも紹介していますが、ハムスターは自分の縄張りのなかに他のハムスターがいることに強いストレスを感じます。
しかも、ハムスターは体の大きさの割に広い縄張りを必要とする動物です。そのため、一般的なハムスター用の狭いケージの中に複数頭のハムスターが暮らす環境では、必然的に縄張り争いが発生します。
もしも入れられているケージが、ハムスターの頭数に応じた縄張りの広さを確保できるほど大きければ争いにもなりませんが、一般的なケージではハムスターを多頭飼育できる広さが足りません。そうした狭いケージ内で縄張り争いが起きれば必然的にそれは相手を排除するためのケンカに発展します。
こうした縄張り争いやケンカが、遮るもののない自然環境のなかで起きた場合であれば、ケンカに負けた方がそこから逃げだせばいいわけですから、命まで失うことにはなりません。
ケンカに勝った方も、自分の縄張りから相手を追い出したいだけですから、縄張りの外まで追いかけてケンカをしようとは思いません。
けれど、仕切りのある狭いケージのなかでは、負けた方は逃げる場所もなくずっと攻撃され続けることになりますし、勝ったほうもずっと攻撃し続けることになります。
こうした縄張りをめぐるケンカの末、負けたハムスターが傷ついて死んだりすれば、死んだハムスターはその時点で生き残ったハムスターの餌でしかなくなりますので、勝ち残ったハムスターは本能的に死んだハムスターを食べてしまうことになります。
これがハムスターの共食いのいちばん大きな原因であり理由です。
ハムスターの共食いは、基本的に餌が欲しくて共食いするのではなく、縄張りを守りたいという本能に基づいてケンカが起こり、結果負けた相手を食べてしまったことの結果です。
ハムスターの飼育本などでも、ハムスターは縄張り意識が強いので、ひとつのケージに一匹が基本ということが必ず書かれているのは、こうしたことが根拠となっています。
でも、ペットショップなどでは、複数のハムスターがひとつのケージ入れられているのをよく目にします。どうしてペットショップでは複数のハムスターがひとつのケージで暮らせるのでしょう。
その答えは、ペットショップでひとつのケージに入れられているハムスターたちは、縄張り意識が芽生える前の子どものハムスターだからです。
そのため、はじめはひとつのケージで仲良く暮らしていたハムスターが、ある日を境にケンカばかりするようになり、気がついたら一方がケージのなかでバラバラになっていた…ということも起きてしまうのです。
一般にゴールデンハムスターに比べると、ジャンガリアンハムスターやロボロフスキーハムスターなどのドワーフ種のハムスターのほうが縄張り意識がそれほど強くないと考えられていますから、それぞれのハムスターの種類や個体差によっては、成長しても縄張り意識がそれほど強くならず、ケンカにならないこともあります。
でも基本的にハムスターは成長に伴って同じケージでの多頭飼育は難しくなっていく動物と考えて飼うほうが安心です。
こうしたことから、ハムスターの共食いを防ぐいちばんの対策は、一つのケージにハムスター一匹という基本を守り、複数のハムスターを飼いたい場合は、別々のケージを用意して飼うこと、同じケージで複数頭のハムスターを飼育しないことです。
飼い主さんの気持ちとしては、一匹では寂しいだろうと思うこともあるかとは思いますが、もともとハムスターは野生でも群れを作らずに単独で行動する動物ですから、一匹だからといって寂しがることはありません。
では、ハムスターが共食いする原因(理由)は、縄張り争いの結果だけなのでしょうか。実は、ケースとしては縄張り争いを原因とする場合ほど多くはありませんが、ハムスターの共食いの原因となるものが他にもあります。
それが餌の不足によって空腹に耐えきれず共食いするケースです。
言うまでもないことですが、家庭で飼育され、十分な餌が与えられているハムスターが空腹を満たすために餌よりも共食いを好むことはまずありません。ところが、十分な餌が与えられていない極度の空腹下では、ハムスターも生きていくためにやむを得ず共食いする場合があります。
その一例として知られているのが、豊富な栄養を必要とする出産後の母親ハムスターによる子ハムスターの共食いです。
よく知られているように、ハムスターは一度の出産でたくさんの子ハムスターを産みます。「幸せなハムスターの育て方」(岡野祐士・今泉忠明監修・大泉書店)のよれば、一回の出産でゴールデンハムスターは平均8匹、ドワーフ種では平均4匹の子供を産むとされていますが、生まれてきた子ハムスターは、成長して自分で餌が食べられるようになるまで、母親ハムスターの母乳に頼って成長することになります。
当然、母親のハムスターには、たくさんの子ハムスターに母乳を与えるために十分な栄養が必要になります。ところが、出産後に十分な餌が与えられない環境では、母親ハムスターは自分が母乳を与えることができなければ子ハムスターが全滅すると知っていますから、なんとかしなければと考えます。
こうした餌のない極限状況下では、やむなく子ハムスターを共食いして残った子ハムスターに母乳を与えようとします。全滅を避けるための究極の選択の結果、やむなく共食いをするのです。
このように餌が極端に不足しているケースでは、単に十分な餌が確保できないことが原因ですから、子育てに十分な量の餌を与えておくという対策で防止することができます。ただし注意が必要なのは、母親ハムスターによる子ハムスターの共食いの原因が、餌の不足ではない場合もあるということです。
それは、子育てに適さない飼育環境の悪さから母親が強いストレスを感じて子ハムスターを共食いしてしまうケースです。
たとえば、常に人間やほかの動物の視線やにおいのしている場所にケージがあれば、子どもを守るために普段以上に神経質になっている母親ハムスターにとって、その環境はかなり強いストレスになります。
こうしたケースでは、その強いストレスに耐え切れず子ハムスターを育てられない、あるいは子ハムスターを奪われるという危機感から母親ハムスターが子ハムスターを殺して食べてしまうことがあると考えられています。
またハムスターを飼っている飼い主さんなら、ハムスターが立ち上がって鼻をヒクヒクしながら、辺りのにおいを嗅ぎとっているのをご覧になったことがあると思いますが、ハムスターはにおいにとても敏感です。
そのため、人間のにおいがついた子ハムスターを敵とみなして攻撃し、死亡した子ハムスターを餌として食べてしまうこともあります。こうしたケースでは、子育て中の子ハムスターを安易に触ってにおいをつけたりしないように気をつけることが効果的な対策となります。
○当サイトの出典及び参考書籍:幸せなハムスターの育て方 [ 岡野祐士 ](大泉書店)/かわいいハムスター飼い方・育て方 [ 田向健一 ](西東社)/小動物の飼育情報満載!スモールペット飼育ハンドブック(緑書房)ほか
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